災害対策と景観
2005-12-29

現在、錦帯橋下流、龍江淵のすぐ側で崖の災害対策工事が行われています。
宇野千代は小説「おはん」で『龍江の崖つ淵へ抜けるまでの裏道は、昼も陽のささない山蔭でござりますのに』、『あのあたりは昼でも暗うござります。道をおほった大樹のあはひに、ただ一とこガス灯のともつてますのが、却って暗さをますよに思はれましてなア。』と描写していますが、現在でも切り立った崖っぷちを、車がやっとすれ違えるかどうかの狭い道が通っています。
その切り立った崖は、風化した花崗岩からなっており、以前から大雨の後などに少々土が流れ出ることもあったようです。以前から道路拡幅の計画もあり、今年の台風の災害復旧と合わせて、とうとう工事がはじまりました。
ところで災害対策工事と言えば、コンクリートで固めてしまうことに相場は決まっています。すでに錦帯橋上流側の国道2号線岩国トンネルそばの崖はコンクリートで固められており、下流側から眺める景観を台無しにしてしまっています。今回の工事は錦帯橋の下流側であり、今度は上流側から眺める景観も台無しにしてしまいます。
錦帯橋のすばらしさは、背景の山をはじめとして、周囲の景観も含めたものです。名勝の指定区域をちょっと外れた場所だからと言って、こういった無頓着な工事(失礼!)を行ってもよいものでしょうか。
もちろん災害防止との兼ね合いもあり、一筋縄ではいかないことは容易に理解できますが、山は緑で覆われてこそ本来の姿だと思います。細やかな配慮が行き届いた工事になることを期待します。
2006-02-15 追記
その後、ある程度の景観配慮が行われていることが判明しました。「続々・災害対策と景観」に記載しています。
投稿者 Matsumoto : 2005-12-29 16:55