続々・災害対策と景観
2006-02-15


先日、「災害対策と景観」及び「続・災害対策と景観」というタイトルで、私の感じたことを書きましたが、今回は、多少の訂正も含め、更にその続編です。
過去2回、錦帯橋のすばらしさは、背景の山をはじめとして、周囲の景観も含めたものであり、山をコンクリートで固めてしまっては景観を、ひいては錦帯橋を台無しにしてしまう旨を書きました。
その後、地元、横山地区の方とお話しする機会がありました。工事前の市による地元説明会によると、「景観に配慮し、コンクリートで固めた上に、特殊な土を30cm程度乗せ、低木類を植栽する」との説明であったと聞きました。また、その説明通り、現在土を乗せる作業が行われています。
それでも気になることがあります。
ひとつは、現に道路を拡幅しており、宇野千代が小説「おはん」で描写した『龍江の崖つ淵へ抜けるまでの裏道は、昼も陽のささない山蔭でござりますのに』、『あのあたりは昼でも暗うござります。道をおほった大樹のあはひに、ただ一とこガス灯のともつてますのが、却って暗さをますよに思はれましてなア。』というような「龍江」の雰囲気は失われてしまいます。
もうひとつは、工事部分の端にフェンスが設けられており、それが植栽によって本当に隠れるのかということです。低木類の植栽では隠し切れないでしょうし、30cm程度の厚みの土では以前から生えていたような高木は育たないでしょう。山の樹木の中に存在する人工的な直線は非常に目立ちます。
元々、市の都市計画によれば、この場所の道路改良方針はトンネルを掘って横山地区と川西地区を結ぶことだったはずです。そうすれば、龍江付近の道路はそのまま歩行者専用として残して、自動車の通行と両立させることができます。
しかし、トンネルには莫大な費用がかかるためでしょうが、これまで着手されていませんでした。しかも今回、災害復旧に名を借りた拡幅工事を行ってしまったので、これ以上の改良は必要なしと見なされ、廃案になる可能性が高いように思えます。
そう考えると、短兵急に結論を急ぎすぎ、稚拙な工事になったのでは、との感が拭えません。
投稿者 Matsumoto : 2006-02-15 09:18