景観破壊...まだ行うのか
2006-12-16
昨年度、龍江付近で行われた道路の災害復旧工事で、錦帯橋の背景になる山が大きく削られ、付近の景観が台無しになりました。
その件は、このブログで「災害対策と景観」シリーズとして書き続けてきました。
・ 「災害対策と景観」
・ 「続・災害対策と景観」
・ 「続々・災害対策と景観」
・ 「続、続々・災害対策と景観
」
ところで、驚いたことに、最近同じ場所で再び工事が始まりました。最初から予定されていたのではないかと思いますが、今年度は、昨年度工事をした場所のすぐ南隣で隣接して立ち木を切り、山肌が剥きだしになっています。これではそれでなくとも見苦しくなっている工事の傷口が二倍になってしまいます。
市は錦帯橋を世界遺産に推薦しようとしながら、同時に錦帯橋の景観破壊も行っているわけで、一体何を考えているのかいないのか、一般市民からみると、まったく理解に苦しみます。
奇しくも、本日付けの中國新聞には『遺産公募 乱立に違和感』との記者署名記事が掲載されています。文化庁の公募により全国から24件もの候補が集まったが、『世界水準に照らして「すごい」ものは何件あるだろう』と疑問を呈し、『はじめに世界遺産ありきで、理由は後付けという地域があるかもしれない。』と厳しく指摘しています。
正直、自称錦帯橋マニアの私でも「現状の錦帯橋」は世界の人々から「すごい」と言ってもらえるとは、贔屓目に見ても到底思えません。
錦帯橋自体の文化的・技術的な水準が非常に高いものであることは、多くの人の共通認識であるだけに、周辺の景観が足を引っ張っているようで、大変残念に思えて仕方がないのです。
「錦帯橋と岩国の町割」で世界遺産に推薦するのであれば、江戸時代そのままとまではいかなくとも、錦帯橋から見える景観は、なるべく現代的なものを排除し、山紫水明の美しさを引き立てる必要があると思います。
ついでに言えば、城下町を偲ばせる「町割」は確かに残っているものの、建物については、当時のものが並んでいる箇所はほとんど無く、また、僅かに残った建物も、ほとんどが現代的に改修された部分が目立っており、こちらも現状のままでは世界遺産に相応しいものとは到底思えません。
素人の私から見ても、世界遺産へのハードルは大変高いと思われ、現状では、とても遥かに及ばないと感じられます。
市は文化庁に提出した「世界遺産暫定一覧表追加資産提案書」の中で、
『この区域は、藩政所を麓に抱える城山、さらには資産から望見できる錦川や周辺山地を含み、資産と一体的な文化的景観を保ちながら、それを保護するための重要な地域である。また、文化財の活用と今後の景観形成のあり方を、住民や行政をはじめとする関係者が総合的に検討し、将来像を合意・共有していくべき範囲ともいえる。』
と述べており、景観問題の重要性について、きちんと認識しています。
「錦帯橋を世界遺産に」という、でっかいアドバルーンを揚げたのですから、こんなちぐはぐなことは止めて、もうちょっと本気が感じられる取り組みにできないものでしょうか。>市長様
最後にちょっと嬉しい話題を一つ。当時の姿を残していながら、倉庫などに利用されて、少々荒れていた「吉川家厩門」の維持補修工事が始まっています。
関連リンク :
世界遺産暫定一覧表への登載提案書提出状況 (文化庁) ≫
世界遺産暫定一覧表追加資産提案書 (岩国市) ≫
※ 2006-12-18 一部加筆修正とタイトルを変更しました。
投稿者 Matsumoto : 2006-12-16 21:11